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くにたちの文化・芸術の可能性 ~ 文化芸術をまちが使うために



元SO-ZO国立2007実行委員会副委員長 (委員会は解散)
現代美術家 RIKI-TRIBAL代表 小池雅久


ある地点から「まちの将来像」を見据え、想像することはとても大切なことですが、そのイメージ(想像)をクリエイト(創造)してゆく過程では、時代の変化に対して敏感に反応するための
まちとしての感性 が重要です。
感性とは本来、全ての人が生まれながらにして持っているものですが、曖昧で確証のもちづらい「感性」は、成長の過程を通じて得る方法や経験、様々な情報の影に隠れがちです。
しかし、ほんとうに自分にとって大切かどうかを判断する最後の鍵は、やはり自分の感性によるところが非常に大きく、私たちに自発性・自主性をもたらす原動力はまさにこの「感性」の部分です。
「まちとしての感性」は、そうした自発性・自主性をもった市民によって築かれるものです。
私たち自身が成長の過程で得た経験や情報に対して「感性」が機能しない時、それら経験や情報は、既成概念となって私たち自身を苦しめます。逆に「感性」が機能することによって、それらは私たちにとって最も有効な道しるべとなるはずです。

アートをはじめ文化・芸術は、人間の成長にとって大切な「感性」に蓋をせず、「自分であること」に気づかせてくれることを通して自発性・自主性を育てる役目を担います。
くにたちというまちが、「文化が香るまち」 「多文化共生社会の実現」 の実現を目指す理由もここになければならないはずです。そうして築かれる くにたちらしさを持った文化・芸術は、くにたちの将来像を実現するための様々な施策を横断し、「様々な人・こと・もの」を繋ぐ ことができるようになると同時に、ここで育まれる文化・芸術は、国立市に暮らす人々に限らず、社会にとって無くてはならないものへと変化することができるのではないでしょうか。

さて今後、文化芸術を「くにたち」というまちが使う ためには、文化芸術の可能性と役割を問い続けながら、さらに、多方向から「くにたちの文化・芸術」をつくって行く必要性があると考えています。

私たちはその一つの方向性として昨年、「SO-ZO国立2007 くにたち秋の芸術祭」を行い、結果、今年2008年もSO-ZO国立は継続することまでが決定しています。これも一つの方向性です。

Q : SO-ZO国立って何?…と聞かれることが良くあります。

A : SO-ZO国立とはイベントやフェスティバルの開催を目的としていません。
SO-ZO国立は、市民が市民の手で、文化・芸術を使ってまちづくりをしてゆくこと 全部を示します。
その為には、文化芸術とはいったい何なのかということを、市民みんなが共に考え、実行してゆく必要性があります。その歩みそのものを私たちはSO-ZO国立と位置づけています。

SO-ZO国立は言ってみれば、国立市というまちの側から、くにたちの文化・芸術について考え、つくり出す方向性を持っています。
この方向性では、国立市の文化・芸術を担う存在である、くにたち文化・スポーツ振興財団の今後のあり方がとても重要です。
長い間、国立市の文化芸術を担いリードしてきたのは全てこの くにたち文化・スポーツ振興財団 です。これまでの経験を存分に活かし、今後ますます変化するであろう社会状況に即した文化・芸術の振興と育成を 是非とも くにたち から始めて頂きたい。 くにたち にはそれができるだけの潜在的なリソースが満ち溢れていると同時に、それを実現するに適したちょうど良い大きさがあることを私たちは知っています。
文化芸術をまちが使う」 これを くにたちで実現することが十分可能だと私は思っています。

■次にこの街に暮らす市民の側から、「文化・芸術を使う」 方向性について。

国立市に暮らす人に限らず、とかく文化・芸術は、私たちの暮らしから遠いイメージを持っています。
その理由は様々ですが、一つの理由として、つくる側と見る側の間に文化・芸術が置かれていることが考えられます。これは言い換えると、文化・芸術が人と人を分かつものになっている ということです。
もちろん、長い間練習してきた成果を見せたり、優れた感性や技を見ることを通じて、人と人が認め合い、繋がりをもたらす可能性はとても大きく、この可能性はさらに育んでゆかなければなりません。
しかし、つくる側の人も、それを見る側の人も、その反対側には、私の方向を向いている人がいることを無視することはできません。文化・芸術をまちが使うためには、私たちが求めている文化芸術とは、人と人を分かつもの では無く、人と人を繋ぐものであることを知りことが必要であり、その意識の上にこそ、くにたちの文化芸術は育まれてゆくのではないでしょうか。

具体的には、つくる側である芸術家、アーティスト、ものづくり…と、市民との共同作業の場づくりを進める必要があります。
くにたち市という場とのつながりの中で、アーティストや市民が共につくり出せる何かを探し、共に作業することによって生み出されるものや出来事から、このまちが「今」求めている文化・芸術は見えてくるはずです。

私たちは、SO-ZO国立2007が終わった後、この為の場づくりを考え始めることにしました。

そんな中、文化庁では現在>、「市民による文化の力で日本の社会を元気にしよう」との構想から、「市民から文化力プロジェクト」を行なっており、各地域の「文化力」(文化の持つ、人々に元気を与え地域社会全体を活性化させて、魅力ある社会作りを推進する力)を盛り上げ、社会全体を元気にしていくための施策を行なっていることに着目し、その中で募集があった、「文化芸術による創造のまち」支援事業 に申請することにしました。 …以下抜粋
地域における文化芸術の創造,発信及び交流を通した文化芸術活動の活性化を図ることにより,我が国の文化水準の向上を図ることを目的とします。
対象となる事業は,地域の文化芸術活動の環境づくり,人材育成及び子どもたちが参加する文化芸術活動の活性化に寄与するもので、①地域文化リーダーの育成、②地域の芸術文化団体の育成、③シンポジウム等による発信・交流、④大学と地域との交流・連携の促進事業です。   …抜粋ここまで。
文化芸術による創造のまち」支援事業
http://www.bunka.go.jp/geijutsu_bunka/chiikibunka/shinkou/sisaku/souzou/index.html私たちは、くにたちアートプロジェクト実行委員会として
『文化芸術による創造のまち支援事業』 に対して以下の5つの申請を行い、それが採択されました。
1:大学と地域との交流・連携の促進 大学―行政―市民共同参画「アートによるまちづくり研究会」
2:地域文化リーダーの育成 「くにたちアートプロジェクト 人材育成ワークショップ」
3:地域の芸術団体の育成 「国立の物語」を創る。 街劇団「えんがわカンパニー」の育成
4:     同上   「くにたちアートプロジェクト 「わらべ歌の時間」の育成
5: シンポジウムなどによる発信・交流 「くにたちアートプロジェクト シンポジウム」

この申請に対して、文化庁が助成することになります。
事業期間は4月1日~3月31日の1年間。
以下、事業申請内容

1:大学と地域との交流・連携の促進 大学―行政―市民共同参画「アートによるまちづくり研究会」一橋大学と地域を結ぶ「まちづくり」授業。この授業学生メンバーMusiAは、国立市市制施行40周年事業として民間による初のアートプロジェクト【SO-ZO国立2007~くにたち秋の芸術祭】を主体的に担い、行政-大学-市民の協働、さらにはアーティストのネットワークを築くなど、国立の「文化的資源の活性化」や「人をつなぐまちづくり」を前進させた。この取り組みを今後も継続・発展するべく企画された「くにたちアートプロジェクト」の調査研究機能を担う母体として「アートによるまちづくり研究会」を立ち上げ、定期的に研究会を開催し、アートによるまちづくり研究ネットワークを構築し、ニューズレターを発行、アーカイブを作成する。
・大学…「まちづくり」授業によるリーダー的学生の育成。一橋大学社会学研究科「市民社会研究教育センター」と共催して「アートによるまちづくり研究会」を企画運営。
・行政…2007年から本格化したアートによるまちづくりを後押し、市民と話し合いの場をつくり市政へ生かす。
・市民…「アートによるまちづくり研究会」への参画、「市民社会研究教育センター」において実践的な共同研究。
・まちづくり学生…くにたちアートプロジェクト実行委員会等に参加、「アートによるまちづくり研究会」への参画。また一橋大学兼松講堂イベントなどを企画実行。

2:地域文化リーダーの育成 「くにたちアートプロジェクト 人材育成ワークショップ」地域で受け継がれてきた自然や芸術文化、生活様式などを、住民参加によって、持続可能な方法で学習・保存・展示・活用していくという考え方や実践であるエコミュージアム型の文化芸術活動を「くにたちアートプロジェクト」と題して展開することを目標とする。「くにたちアートプロジェクト」の目的は、地域に暮らす芸術家と一般市民が共同して、街の中の様々な場所で小さな展覧会を企画し、それらを有機的に連動させることを通じて、街が潜在的に持つ芸術リソースの再発見や、この街だからこその芸術を新たに創出することである。活動分野は美術のみならず、音楽や演劇など芸術活動全般である。地域の特性を生かすことのできる地域文化リーダーを育成することで、個性豊かなまちづくりに寄与したい。そのために、月1回、地域の文化芸術を調査するワークショップや、親子で参加可能なワークショップを開催することを通じて、「くにたちアートプロジェクト」を推進する地域文化リーダーを育成すると同時に、芸術家と市民が一体となって、芸術文化活動の意義と可能性を共に考察できる場を提供する。

3:地域の芸術団体の育成 「国立の物語」を創る。 街劇団「えんがわカンパニー」の育成国立の街の記憶・暮らす人のインタビュー・フィールドワークを集め創ったオリジナルの戯曲をさらに発展させ、新しい『わが街~くにたち』を上演する。この創作過程を通じて、国立の過去・現在を演じることで実感し「まちづくり」の視点を養いながらも役者としての育成を目指す。さらに劇団員以外の市民に向けても、脚本世界を演じながら舞台世界へ意見を反映するワークインプログレスを開催。より開けた作品創りを目指す。また上演後もワークショップ・公演を続け、地域に演劇並びに劇団が根付き、豊かな文化・芸術創造に寄与することを目的とする。

4:地域の芸術団体の育成  くにたちアートプロジェクト 「わらべ歌の時間」 の育成これからの地域文化リーダーとなるのは地域に住む「子どもたち」に他ならない。芸術を介して地域と触れ合うことは、子どもたちの人格形成のみならず、地域の将来的かつ永続的な活性化という点できわめて重要である。こうした理念の下、申請者・小池は自ら運営する「プランターコテージ」において「わらべうた」教室を定期的に開催し、好評を博してきた(月2回・4年間でのべ96回)。「わらべうた」は昔から親から子、孫へと歌い継がれてきた歌である。うたの範囲は北海道から沖縄まで日本全国に渡り、土地の特色を反映しているので、子どもたちは歌い遊びながら各地域の記憶に触れることができる。このように地域と歴史の結び目をなす「わらべうた」を用いた活動は、単に伝統を伝えるに留まらず、街と芸術文化の接点を探る私たちにとって重要なプログラムとなる。「わらべうた」の定期公演を月に2~3回、プランターコテッジ他でおこなう。

5: シンポジウムなどによる発信・交流 「くにたちアートプロジェクト シンポジウム」地域社会に暮らす芸術家と市民が社会とアートについて共に学びながら「今、此処でしかできない芸術」を創造するという共同作業を通じて、アートを積極的にまちづくりに活用する仕組みづくりそのものを、「くにたちアートプロジェクト」と題し、こうしたアートの可能性を一般市民とも共有するために、計3回、市内の公共施設でシンポジウムを開催する。発言者としては、第一線で活躍する芸術家や評論家、ギャラリスト、美術キュレイターを招く。これらのプログラムは芸術家のための芸術講座ではなく、一般市民が地域で日常的にどのように芸術を育成していくのかという問題設定の下で開催される。アートと社会との関係性についての情報発信を定期的に行なうことによって、「くにたちアートプロジェクト」への理解、参加者の拡大を図る。


■ その他の方向性については後日。
by riki-tribal | 2008-04-03 11:53 | 国立のこと
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